あの壁の隅のめっちゃ小さい茶色いやつ
引っ越してきたばかりの部屋で、荷解きも一段落したある日のこと。ふと壁に目をやると、視界の隅に小さな茶色い点が動いているのに気がついた。なんだろう?と思って近づいてみると、それは紛れもなく蜘蛛だった。しかも、めっちゃ小さい。体長なんて、よく見ないと分からないくらい、ほんの数ミリ。色は薄い茶色で、なんだか頼りなげに細い脚を広げている。正直、私は蜘蛛が大の苦手だ。大きい蜘蛛なら悲鳴を上げて逃げ出すところだけど、あまりにも小さいその姿に、恐怖よりも先に「ちっさ!」という驚きが勝ってしまった。ティッシュで捕まえようか、掃除機で吸ってしまおうか。一瞬迷ったけれど、なんだかそのか弱そうな姿を見ているうちに、少しだけ気持ちが変わってきた。こんなに小さいのに、一生懸命生きているんだな、と。それに、ネットで調べてみたら、家の中にいるこういう小さな茶色い蜘蛛は、イエユウレイグモとかいう種類で、人を刺したりすることもないらしい。むしろ、ダニとか他のもっと嫌な虫を食べてくれる益虫なんだとか。それを知って、ますます駆除する気が失せてしまった。とはいえ、部屋の中を自由に歩き回られるのはやっぱりちょっと抵抗がある。だから、私は彼(彼女?)を「スミッコさん」と名付け、壁の隅の住人として、そっと見守ることに決めた。掃除の時も、スミッコさんのいるあたりは少しだけ避けて、刺激しないように。最初はやっぱり視界に入るたびにドキッとしたけれど、数日もすると慣れてきて、時々「あ、今日もいるな」と確認するくらいになった。害がないと分かれば、そして過剰に意識しなければ、意外と共存できるものなのかもしれない。もちろん、増えすぎたり、違う種類の蜘蛛が出てきたりしたら、また考えなければいけないけれど。今のところ、我が家の壁の隅には、めっちゃ小さい茶色い「スミッコさん」が、静かに暮らしている。
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