あれは蒸し暑い夏の日の午後でした。ベランダのプランターに水をやろうとした私は、エアコンの室外機の裏に、見慣れない模様の塊があることに気づきました。それは紛れもなく、アシナガバチの巣でした。大きさはまだ拳ほど。これくらいなら大丈夫だろう。私は妙な自信とともに、家の中から蜂用の殺虫スプレーを持ち出してきました。今思えば、この安易な判断がすべての間違いの始まりでした。何の準備もせず、半袖Tシャツに短パンという普段着のまま。風向きの確認も、避難経路の確保も、頭には全くありませんでした。ただ、目の前の巣を早くなくしたい一心で、私は室外機に近づき、巣に向かってスプレーを噴射しました。ブシューッという音と共に、白い薬剤が巣にかかります。やったか、と思ったのも束の間、巣から数匹の蜂がブンブンと羽音を立てて飛び出してきました。パニックになった私は、スプレーを噴射し続けることも忘れ、悲鳴を上げてその場で後ずさりしました。その動きが蜂をさらに刺激したのでしょう。一匹の蜂が猛然と私に向かって飛んできて、あっという間に右腕をチクリと刺したのです。焼けるような痛みに、私はスプレー缶を放り出し、転がるようにして部屋の中に逃げ込みました。腕はみるみるうちに赤く腫れ上がり、ズキズキとした痛みが続きました。幸い、アナフィラキシーショックには至りませんでしたが、その後の数日間、痛みと腫れ、そして痒みに悩まされることになりました。残された巣と、ベランダを飛び回る蜂を前に、私は自分の無知と準備不足を心から悔やみました。結局、その日の夜、専門の駆除業者に連絡し、翌朝に来てもらうことになりました。この苦い経験は、私に多くの教訓を与えてくれました。蜂スプレーは、正しい知識と万全の準備があって初めて効果を発揮する道具であること。そして、自然の生き物の力を決して侮ってはいけないということ。あの夏の日の痛みは、安全対策の重要性を私の体に刻み込んだ、忘れられない戒めとなっています。
私が蜂スプレーで大失敗したあの夏の日